労務

(1)残業代

経営者の皆様が一度は頭を悩ませたことがあるであろう問題、「残業代」についてご説明します。

まず、残業代の計算の基礎となるのが、「通常の賃金」です。残業代は、これに「割増率」というものを乗じて計算されます。

「通常の賃金」に基本給部分が含まれるのは当然ですが、家族手当や住宅手当、ボーナスなどは含まれません。
「割増率」は、労働基準法に最低限が規定されていますが、就業規則等でこれより高い割増率を設定している場合には、そちらが優先されます。

ところで、未払いの残業代を請求された場合、請求にかかる時間、本当に働いていたのか不明であるということがあります。
確かに、残業代請求の基礎となる実労働時間については、労働者の側がタイムカードやパソコンのログイン日時等で立証する必要があるのですが、他方で、会社は、労働者の労働時間を管理する義務を負っています。

ですので、使用者が労働時間を管理せずに、労働者の側が労働時間を立証できなかったとしても、ある程度、労働者に有利な認定がされかねません。

よって、残業代を支払わないために労働時間を管理しないというのは適切ではなく、不当な残業代の請求を防ぐためにも労働時間はきっちり管理した方がよいということになるのです。

(2)解雇

「解雇をした従業員から突然訴えられてしまった」
「能力不足の社員を辞めさせたいが、どのようにして辞めさせればいいかがわからない」
「労働基準署から突然連絡が入り、警告を受けてしまった」

解雇とは使用者による労働者の契約解消のことですが、我が国では、企業の採用の自由が広く認められていることとの関係で、解雇には一定の制限がかけられています。

例えば、就業規則に解雇事由として規定をおき、それに該当する事実が発覚したとしても、それももって直ちに解雇することはできません。仕事ができない社員や勤務態度が悪い社員を放置しておくことは、企業の発展を阻害するばかりか、損失を被ることにもなりかねませんが、安易に解雇してしまうと、従業員から訴えられることもあります。

したがって、従業員の解雇に関して、正しい理解をもっておく必要があります。

労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」、と規定しています。すなわち、解雇には、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要となるのです。

①客観的で合理的な理由とは、以下に述べるような、その名のとおり解雇の理由です。

・傷病により労務を提供できないこと
・勤務態度の不良により、会社の指示に従って労務を提供できないこと
・労働契約の目的を達成できないこと
・経歴を詐称して契約を結んでいた場合 etc…

②社会通念上の相当性とは、例えば、以下のような事情を総合的に考慮して決せられます。

・解雇が適法な手続きに則って行われているか
→例えば、解雇を行う場合、30日以上前に解雇の予告をするか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払う必要があります(労働基準法20条)
⇒もっとも、絶対に上記の定めに従う必要があるかというと、そうではなく、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受ければ、上記の手続きは必要なくなります。例えば、従業員が刑法犯に該当するような行為を行った場合などです。

・解雇が不当な目的や動機からなされたものでないか
・社内の同種事案との比較で均衡が取れているか
・解雇理由とされた行為に対する処分として相当な処分といえるか
→例えば、勤務態度の不良と言った場合、通常は、解雇の前に、口頭注意、戒告、減給といった処分が存在するため、これらの処分を一切行うことなく解雇を行うというのは認めがたいということになります。

このように説明をして参りましたが、解雇が認められるか否かというのはケーズバイケースであり、画一的な基準をお示しすることは困難です。

もっとも、お客様から事情をお伺いすることで、弊所で扱った類似の事例との比較や裁判例検索システムによるリサーチなどによって、解雇が相当か否かといったことについてアドバイスを差し上げることが可能です。

また、解雇の手続きについても、ご指導をさせていただきます。

一度トラブルになると、その解決には、労働審判や訴訟等で数か月から数年程度かかることもあり得ます。

ですので、是非トラブルになる前にご連絡いただき、最良の解決策をご提案させていただければと思っております。


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